今回は、渚カヲルの有名なセリフ『そうか、そういうことか、リリン』です。
旧劇でも新劇でも、渚カヲルは騙されているわけですが、何を勘違いしていたのか、簡単に考えていきたいと思います。
テレビ版、旧劇場版の場合
ゼーレの少年として、シンジの前に現れた渚カヲル。ターミナルドグマに降り立ち、十字架に貼り付けになった巨人に近づくや
『アダム。我等の母たる存在。アダムより生まれし者はアダムに帰らねばならないのか?ヒトを滅ぼしてまで・・・違う、これはリリス!! そうか、そういう事かリリン』
と完全に騙されてます。誰に騙されたのかといえば、ゼーレ
ゼーレ『だが、我等の希望は具象化されている』
ゼーレ『それは偽りの継承者である黒き月よりの我らの人類、その始祖たるリリス』
ゼーレ『そして正当な継承者たる失われた白き月よりの使徒、その始祖たるアダム』
ゼーレ『そのサルベージされた魂は君の中にしかない』
ゼーレ『だが、再生された肉体は既に、碇の中にある』
カヲル『シンジ君の父親、彼も僕と同じか』
ゼーレ『だからこそお前に託す、我等の願いを』
カヲル 『わかっていますよ。その為に今、僕はここに居るわけですから』
ゼーレは、ターミナルドグマにカヲルが降り立つ前に、アダムの魂はカヲルに、アダムの肉体はゲンドウ(ネルフ)にあることを伝えています。ゼーレとカヲルのやりとりをみると、カヲルは、ゼーレの願いとは『カヲル(アダム魂)がアダム(アダム肉体)に還り、サードインパクトを起こして人を滅ぼし、アダム系が生き続ける』ことと思っているはず。
まさか、ゼーレが『リリスを使って、サードインパクトを起こし、リリンが生き続ける』ことを考えていたとはつゆにも思っていなかったということです。
ゲンドウと冬月のやり取りやキール議長の発言から踏まえると、ここからの展開は三つありえました。
- 『二号機の物理的融合を果たすつもりなのか』(冬月)
- 『あるいは破滅を導くかだ』(ゲンドウ)
- 『初号機による遂行を願うぞ』(キール)=カヲルの第17使徒としてのせん滅
結果は、カヲルの第17使徒としてのせん滅であり、初号機パイロットのシンジ君は自我が崩壊気味となります。
劇場版で、ゼーレは、初号機パイロットを射殺し、エヴァンゲリオン初号機をゼーレ管理下において、ゼーレのシナリオをすすめようとしていましたが、これが失敗してもシンジの自我が崩壊していればそれを利用して補完ができると、保険をかけていたことになります。
新劇場版の場合
誰に騙されていたのか、カヲル君の発言を拾っていくと、新劇場版はゼーレではなくゲンドウに騙されています。
カヲル君の勘違いは、カシウスの槍とロンギヌスの槍がターミナルドグマにある、ということ。リリスに刺さっているのはロンギヌスの槍で、Mark6に刺さっているのはカシウスの槍と考えていたということでしょう。自分がMark6でカシウスの槍を初号機にさしてますし
新劇場版のセカンドインパクトの映像では、二本のロンギヌスの槍と、二本の???の槍となっており、???はおそらくカシウスの槍。ロンギヌスの槍がカシウスの槍になるのか、カシウスの槍がロンギヌスの槍になるのかは、私はならないのではないかと思っています。
カヲル君は『おかしい。二つとも形状が変化してそろっている』と述べています。そう、ロンギヌスの槍は刺さるときには形状が変化します。二股が変化してやり投げの槍のような形に。
カシウスは形状変化せず初号機に刺さりましたので、カヲル君の発言は『形状変化してそろっているということはロンギヌスの槍じゃないか。カシウスの槍はそんな変化しない』ということをいっているだけです。
同じロンギヌスの槍が二本あるだけ、そこで、カヲル君の『そうか、そういうことかリリン』となります。
旧劇場版と違うのは、
- リリスがいることは今回は認識
- アダムに還り、サードインパクトを起こして、人類を滅亡させようとは全く思ってなさそう。シンジ君のことを気にかけ、世界の修復を考えている
- さすがリリンの王、シンジ君の父上だ、とゲンドウくんをべた褒め
- エヴァンゲリオン第13号機(アダムスの生き残り)がカヲル君をトリガーとして覚醒し、ガフの部屋を開け、フォースインパクト。黒き月が浮上し地上にむき出しになる
- シンジ君こと初号機に絞殺されるのではなく、DSSチョーカーで実質の自爆
旧劇場版と同じなのは
- ナンバーがちがうものの、『第1使徒の僕が第13番目に落とされ』、『始まりと終わりは同じところにある』と最後の使徒(死者)になったこと
- シンジ君は結局、保険。カヲル君が死んでも、フォースインパクトが継続するように、ダブルエントリーシステムで第13号機の中に
まとめ
旧劇場版の場合は
- サルベージされたアダム(肉体)があると思って、ターミナルドグマにいったら、リリスで目論見はずれ。未来を生きる生命体は人類と、未来を譲り、シンジ君こと初号機に絞殺された
新劇場版の場合は
- シンジ君を幸せにするために、世界を修復しようと、ロンギヌスとカシウスの槍を回収しにターミナルドグマに行ったら、ロンギヌスの槍しかなく目論見はずれ。シンジ君をこれ以上不幸にしまいと、フォースインパクトを中断させるため、DSSチョーカーの自爆を受け入れ自死
シンジ君の自我からしてみたら、あまり結末は変わってない気もしますね・・・新劇場版だとターミナルドグマで槍を抜く際にアスカに手を挙げてしまったので、より事態は悪化した感じでしょうか。